会社案内 デザインの使える裏技

三全総時代に乱開発を防ぐための工夫が都市計画法や建築基準法にせっかく盛り込まれ建築基準法に、二全総の時代に多発した中高層建築にたいする市民の反発と日照被害にたいする反対が結実した改正がもりこまれたのも、この三全総の時代である。 高い容積率が、地価高騰を引きおこし、周りの住環境を悪化させたという反省から、住居系地域では、道路が狭ければ、沿道の建築物の容積を低く抑える、つまり道路と容積の関係を強化して、容積率を実質的に引き下げる、などの仕組みが盛り込まれた。
また、日影規制が導入されたことにより、不十分とはいえ従来よりも周辺の日照はある程度は確保され、ビルの高度制限にも一定の役割を果たすことになった。 建築基準法を守ってさえすれば、周辺の住宅の日照をいくらさえぎろうとも、かまわない、という従来の法的立場を日照権U基本的人権の視点から変更させたという点で画期的であった。
ここにも、市民運動によるまちづくりの一歩前進がある。 だが、中曽根内閣時代に、そうした工夫を圧倒する極めて大規模で、広範囲にわたる規制緩和の嵐が吹き荒れ、日本の都市計画は暗黒の時代に突入する。
その経緯は日本の都市計画の本質をあらわにした点で詳しい検討に値する。 同内閣が内政の目玉に掲げた「民間活力」による都市再開発が、市民の側からいえば町壊しが正式に政府の政策として浮上したのは一九八三年四月五日、経済対策閣僚会議が「今後の経済対策について規制の緩和策による民間投資の推進策」を決定したときである。
中曽根首相は、同年五月十二日に開かれた日経連総会のあいさつのなかで、「都市再開発進方策」を発表し、アーバン・ルネッサンスの具体的な推進策を示した。 委員会はその後、拡充され「民間活力検討委員会」に改組されたが、同委員会は、一九八四年四月十三日「第一次報告」を、一九八五年四月十七日には「第二次報告」を発表し、推進策の点検とあらたな展開をおこなっている。
建設省の「規制緩和等による都市開発の促進方策」は次の五つの柱からなっていた。 一般的に、土地の高度利用をはかるべき地域では、地域地区指定などを高度利用にそう方向に変更し、再開発の推進を幅広く推進する、民間建設活動による再開発計画に対しては、積極的に個別的な規制緩和をおこなう、狭小住宅が密集し、道路整備が遅れている大都市の既成市街地では再開発と道路整備を一体的に推進する、種の再開発促進事業制度を民間活力の導入をしやすいように改善する、再開発の推進に必要な税制上の特例措置をとる。

ここで、建設省の「都市開発の促進方策」がどのように実施されたかを見ておこう。 一般的な規制緩和としては、高度利用促進のため用途地域の変更をおこなうが、とくに大都市の中心部の住宅地を中高層住宅にするため、第一種住居専用地域を、第二種住居専用地域に指定替えする(環状七号線)山の手線以内の住宅を五階以上にするという中曽根発言に合致する)、土地利用の変化に応じてスポット的な用途地域の変更を機動的におこなう、第一種住居専用地域の高さ制限は十メートルだが、十二メートルも認め、一専地域でも三階建てを推進する、高容積率の指定されている地区や高度利用計画のある地域の最高限度を緩和する、などの通達がだされた。
個別的な規制緩和の実施策も相次いでうちだされたが、主な例をいくつかあげてみる。 側マンションのようにおもな用途が住宅である建築物については大幅な容積率の割増を認める「市街地住宅総合設計制度」の創設(一定割合以上の公共用空地を設けた建築については、建築基準法の規制を緩和するために一九七○年の改正で創設された、いわゆる総合設計制度を、大規模マンション向けにさらに緩和をすすめたもので、東京でいえば隅田川ぞいの巨大なマンションなどに幅広く適用されてきた)。
特定街区制度における建築物の容積率と高さ、および道路などからの壁面位置のさらなる緩和(特定街区制度は一定の市街地を対象にしたもので、一定割合以上の公共用空地を確保した建築計画について規制を緩和する制度で、超高層ビル開発などに大いに利用されてきた)。 一団地の建築物にたいする特例制度の追加緩和措置(建築基準法は個々の敷地を前提にして適用するのが原則だが、複数の建築がならぶ団地などについてはその敷地を一体とみなし、容積率、高さなどの制限を緩和していた。
これがさらに緩和された)。 さらに、宅地開発を推進するためとして、市街化調整区域内の開発を五ヘクタールから認めることになった。
一九八三年五月十日付けの都市計画法施行令三十一条の改正によるもので、従来は、調整区域内での開発はミニ開発を抑制するため二十ヘクタール以上と定められていた。 さらに一九八五年十二月二十七日の建設省都市局長の通達は、市街化区域と市街化調整区域の見直しを全国の自治体に指導しているが、市街化区域の拡大を目指したものこうした雪崩のような通達による規制緩和をおこなった後で、建設省は民間活力検討委員会の二次にわたる前記の報告で、民間活力の活用をさらに呼びかけるとともに具体的な提案をおこなっている。
基本的な原則としては、大都市では中心部の土地の高度利用を推進し、新市街地の開発にった。 このほか、建設省は、都市の再開発事業にたいする補助金などの公共投資の重点的配分、市街地再開発制度の施行条件の緩和、都市再開発法によらない狭小住宅の共同化にたいする税制上の優遇措置、補助金、融資の提供などのアーバン・ルネッサンス推進措置をとった。
西戸山国有地の払い下げこうした規制緩和の洪水、あるいは緩和への期待感に当時の超低金利政策がかさなって戦後最大の地価高騰がおきるのだが、その直接の引き金として非難を浴びたのが、もうひとつの規制緩和策である国有地の払い下げだった。 一九八三年八月九日、大蔵省は中曽根首相の直々の指示で、理財局長の私的諮問機関として「公務員宿舎問題研究会」を設けた。
公務員宿舎全般を討議する機関のような印象をあたえる名称だが、首相が名指しにした東京都新宿区西戸山のついても計画的、積極的に推進する、地方都市でも同様の方針でのぞみ、地方経済を活性化する、「官」、つまり国や自治体は都市開発の制度改善、都市基盤の整備、開発目標や計画の設定をおこない、これらの措置に合致する民間の開発にたいする支援、誘導を積極的に果たす、民間は、こうした促進策にそって、「民間本来の効率性と企業精神を生かし」都市開発や再開発に本格的に取り組むべきである、の四点に集約されよう。 具体的な追加策としては、建築物の未利用の容積を隣地に移すようにするなど容積率の総合的な利用、再開発を推進するための地方公共団体、住民、民間デベロッパーの協調組織による、木造賃貸住宅再開発などの検討があげられていた。

国家公務員宿舎跡地の民間への払い下げが検討課題という異例のものだった。 この研究会はわずか一カ月余のスピード審議で、同年九月十九日には「都心における公務員宿舎の高層化による用地の活用について」という答申をだした。
内容は、老朽化した公務員宿舎を民間に払い下げて高層住宅にするべきで、西戸山の宿舎跡地をモデル・ケースと位置づけていた。 この問題では、中曽根の資金源のひとりである建設業者が舞台回しの役割を演じていたことは公然の秘密だった。

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